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DAS-703ES 概要・補足PHOTO       写真はDAS-703ES S/N:200134

  ■内側に制振材が貼られたアルミ3mm厚の天板をはずすと、目に付くのが2個のトロイダルコアに巻かれた電源トランス。

■写真上がアナログ回路用(T402)、下はデジタル回路用(T401)、それぞれ専用の大型電源トランスを搭載したセパレート電源方式。

■パラにつながれた2個のトランスの一次側には150Ω+0.033μのスパークキラーが入り、電源スイッチ開閉時の逆起電圧を制御。電源スイッチの接点間にもスパークキラーが入り、電源投入時の接点スパークを押さえる。ヒューズはアナログ用が2A、デジタル用には0.8Aがそれぞれヒューズ基板にマウントされている。

■電源コードは極性マーク入り、コードの着脱はできない。
■写真は電源部定電圧基板。アナログ回路用の整流後のDC電圧は±23V、ディスクリート回路で構成された定電圧電源回路で±14.5Vを出力している。各電圧は無調整回路方式としている。

■ケミコンは全てELNA製「セラファイン」を採用、右上に4個写るケミコンは2200μ71V、整流ダイオードはデジタル系にはSBD、アナログ系にはFRDが採用されている。

■デジタル回路用は±5V、+8.8V、+20.5Vのマルチ電圧、レギュレーター素子は3端子レギュレーターを採用、それぞれのブロックへ供給されている。

■配線材には、音質を損なう結晶境界を大幅に減少させたLO-OFC(線形結晶無酸素銅)が使用されている。


■写真上がセラミックスパウダー入り大型コンデンサー、確かマイカであったと記憶する。天板を開けるとこのコンデンサーも目に付く。SHOSHIN製・VT-2AにSONYラベルを貼った6.8μ100V、バッファーアンプの出力カップリングコンデンサーである。ラベルが貼られていないロットもあるようだ。

■2年後に商品化されたDAS-R1のアナログ回路部にもほぼ同じ回路が採用されている。SHOSHINのコンデンサーも健在。

■LINE OUTはFIXEDとVARIABLEの2系統装備されているが、このコンデンサーを通るのはFIXED出力端子である。VARIABLEは10μケミコンとフィルムコン0.01μがパラに接続されたカップリングコンデンサーを通り、ラインボリューム経由で出力される。ラインVRはアルプス製φ40、ヘッドフォーンアンプの音量調整も兼用する。

■抵抗は金メッキリード・音響用カーボン抵抗、理研RMGが採用されている。残念ながら現在この抵抗は製造中止、市場在庫のみでしか入手はできない。

■リレーはライン出力のミューティング用リレー、定格はDC9V、このタイプのリレーも入手が難しくなってきた。見かけたら入手しておくことをお進めする。4個使用。
■写真は電源部とアナログ回路部の基板。基板はガラエポ1.6mm片面基板、アナログ部のレジストは“ES基板”、電源部はベタレジスト。パターンの版下設計は手書きである(この当時はCADは未だの時代)。

■アナログ信号処理は。十分に検討を加えた回路構成とパーツを採用し、高水準な音楽再生を可能としている。ケミコンはELNAセラファイン、抵抗は理研RMGと、電源部の一部には金属皮膜抵抗を採用。、

■配線材には、音質を損なう結晶境界を大幅に減少させたLO-OFC(線形結晶無酸素銅)を使用。ひずみの少ない、クリアな音質を再現


■パワーON/OFF時、ラインセレクト時などでは、ライン出力はリレーでショートされ、いかなる操作でもクリックノイズは皆無、操作は快適である。
■左に見えるのがラダー型DAC IC、バーブラウンPCM53JP-1、セラミックの放熱板で放熱。左中央寄りがポストフィルター、中央部より右に向かってバッファーアンプ部、信号の流れに迷走がない。中央付近のケミコンはセラファイン。整然と配置された回路レイアウトと吟味されて採用された部品に、設計者の本機に対する思い入れが感じられる。

■デジタル・データー信号とDACの間はフォトカプラー(PC-910)で分離、グランドリターンに起因するノイズの影響を避けDACに入力される。フォトカプラーの出力はシリアルデータ、CXD1058・シリ・パラ変換ICを経てDAC PCM53に入力される。

■ポストフィルターはGIC型7次アクティブフィルター、バッファーアンプ部はオペアンプでドライブ、MOS-FET出力回路を経てラインアウトされる。

■L・Rツインモノ構成の採用で左右チャンネルの干渉を防ぎ、セパレーションの良い音質が得られる。
■写真はDAC部周辺。DAC ICはセラミック板による放熱 要所要所には銅板、銅箔で厳重なシールドが施されている。

■写真上部シールド板の下付近にソニー製シリアル・パラレル変換IC、CXD1058Qがマウントされている。

■写真下の方に左右2個見えるヒートシンクに樹脂が封入されているのは、キャンタイプのオペアンプLF356H(IC512)、サンプル&ホールド回路である。
■ガラス・エポキシの基板上のパターン間のレジストを無くした“ES基板”により、パターン間容量による音質への悪影響を低減。

■この当時レジスト印刷(絶縁塗料)がパターン間にかかると、パターン間で微小容量が発生し、パターン間での飛びつきによる干渉、F特劣化などが提訴さてた。ソニーではこれを踏まえて“ES基板”と命名し、パターン間のレジスト印刷を抜いた基板を開発、ESシリーズの多くの製品に使われていた。・・・・理論的にはそのとおり。しかし、その結果は?・・・・。

■DAS-703ESは「良い」と言われることは全部網羅した、妥協のない製品作りがうかがえる。

■本機のデジタルインターフェース部、電源部の基板はベタレジストである。
■デジタルINは2系統、通常2台のCDプレーヤーをここにインプットする。切り替えは前面パネルの「DIGITAL INPUT SELECTOR」で切り替える。

■他に「TAPE IN」が準備され、ここにはDATなどから入力される。この端子は“第3のデジタル入力端子”としても使用可、この端子を使用するには、前面パネルの「DIGITAL TAPE MONITOR」のON/OFFで使用できる。
■サンプリング周波数は、32kHzから48kHzのどのような周波数に対しても自動選択可能。

■表示は、32kHz、44kHz,48kHzのいずれか近いものが点灯する。
■アナログ・ラインアウとは出力レベル固定(FIXED)とレベル可変(VARIABLE)の2系統のライン出力端子を装備する。

■可変出力は、前面パネルのヘッドフォンボリュームとの兼用で可変する。

■小生の推奨は「FIXED」である。FIXED出力端子は本機の象徴的とも言える、出力カップリングコンデンサー、SHOSHIN製6.8μを通って出力されるからだ。しかし、実際には可変出力との音質差はさほど大きな差異があるわけではない。
■背面に飛び出た「DIGITAL REC OUT」端子。DATなどへのデジタル録音機器に接続する。

■この出っ張りがラック収納時には結構邪魔になる。アイソレーション用のパルストランスから放射されるデジタルノイズが、アナログ回路へ与える悪影響を回避するためのシールドケースと、アナログ回路とのクリアランスを確保するための出っ張りだと推測する。

■翌年リリースされたCDプレーヤー「CDP-555ESD」も2個の電源トランスが筐体の外に出っ張る構造。これも邪魔になる!・・・・・。


■でも“あばたもえくぼ”、これもデザインのうち、小生はむしろヘビーデューティーなデザインだとも感じる。
■銅メッキ鋼板の“弁当箱”に入れられたデジタルインターフェース回路。DIR回路ブロックは前作DAS-702ESからの流用である。

■今この機械を見て思うのは、この部分は本機の“傑作とも“作品”とも言える回路である。

■今では、マルチサンプリング周波数に対応する1チップICはいくらでも存在するが、この当時のデジタルインターフェース(DIR)のICは、CDフォーマットの44.1kHzのみであった。


■ちなみにDAS-703ESのデジタルフィルターは2倍のオーバーサンプリングである。
■弁当箱の蓋を開けるとご覧のとおり。ロジックICがずらり並んだ、サンプリング周波数32kHz〜48kHzにシンクロするディスクリートDIR回路である。

■DAS-703ES自身では発振周波数固定のクロック発振器を持たない。クロックは入力フォーマットにシンクロしたPLL回路を原発とし、それぞれ必要なクロック周波数を生成している。

■今巷でにぎやかなのは、ワードクロックにルビジュームだの、GPSだのと、やたら高精度原発を求める。当時のエンジニアはこれをどう思うのか?・・・・。一度原点に返って、CDプレーヤーの「本質的な高音質設計とは?」を見直す必要はないのか?。DAS-703ESを眺めてそんなことを一人思うのである。
■裏蓋を開けた写真。筐体は強靭なアルミサッシで構成され、内部には同じくアルミサッシのリブが横断する。横断するリブには各基板と、銅メッキされた箱に入ったデジタルインターフェース部が取り付けられている。手前の黒い板金部には2個の電源トランスがマウントされている。

■裏蓋は3mm厚の銅板に黒塗装、かなりの重量である。ちなみに天板はアルマイト処理がなされたアルミ製3mm厚、内側に制振材が貼られ、これも質量は大きい。

■筐体は密閉型、埃の入る隙間はなし、長時間経過後の内部は綺麗な状態が保たれる。・・・・製品設計の基本は筐体に穴を開けることが避けられない製品を除いては密閉型が望ましい。必然的に筐体が厚手のアルミ筐体になり、結果として内部は綺麗な状態が保たれ、高音質製品につながるのではと考える。

■本機の重量は16kg。メカのないデジタル機器でのこの重さは重量級である。



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